ストレス性の胃腸トラブルケアに有効な「温補」

過敏性腸症候群や神経性胃炎といった、自律神経や感情の乱れを原因とする胃腸トラブルは、東洋医学では、肝臓、胃腸、脾臓などが「陰」の氣に偏っていることから生じると考えられています。陰に偏った身体は、陽の氣を入れて陰陽バランスをとる必要がありますが、そのために有効なのが、身体を温める「温補」という方法です。

胃腸トラブルの本当の怖さ

仕事や人間関係などの嫌なことを思い出したとたん、胃がムカムカしたり、みぞおちのあたりが痛くなったりした経験はありませんか？ あるいは、通勤途中で急な下痢に見舞われたり、職場でやたらにお腹が張るということは？
こうした胃腸トラブルの中には、内視鏡などで検査をしても異常が認められないものがあります。炎症や潰瘍、ポリープといった不調の直接的な原因がないにも関わらず、痛みや不快感などの症状が現実に現れるのです。具体的には、慢性胃炎、胃けいれん、過敏性腸症候群などの診断名が挙げられますが、近年では、これらを総称して機能性消化管障害と呼んでいます。
検査をしても異常が認められないこともあり、機能性消化管障害は、しばしば服薬による対症療法に留まりがちです。しかし、これは非常に危険です。症状が長期にわたると、実際に潰瘍やポリープができたり、消化活動や老廃物の排泄がスムーズに行えないことにより、むくみ、肌荒れ、口臭・体臭が起きることも。さらに、食欲不振から摂食障害になったり、いつトイレに行きたくなるかわからない不安から適応障害になる可能性もあります。では、いったいどう対処していけば良いのでしょうか。

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東洋医学では自律神経との関係に注目

東洋医学では、胃腸のトラブルは、ストレスと深くかかわる自律神経や感情の乱れが主たる原因と捉えています。東洋医学において、人間の機能は「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の5つに分けられています。この5つは陰陽五行に基づき図のような関係にあり、胃腸は「脾」に相当します。自律神経や感情を調節する「肝」が乱れると、相克の関係にある「脾」が乱れます。つまり、自律神経のバランスが崩れたり感情がネガティブに傾きすぎたりすると、胃腸に不具合を生じると考えているのです。
なお、西洋医学では、異常の箇所が特定できないことから「原因不明」とされる機能性消化器官障害ですが、実際にはストレス性疾患として扱われることが多いようです。

温めるケアで陰陽バランスを整える

陰陽五行に基づく東洋医学では、何事もバランスを重視します。その代表的なものに「実証・虚証」があります。これは、人の体質や状態を分類する概念で、実証は陽の氣が強い人（状態）、虚証は陰の氣が強い人（状態）。そのどちらでもない人（状態）が中間証です。自律神経や感情の乱れは、強いストレスを感じているときや心身の疲労状態（＝陰＝虚証）のときに生じます。また、体質的に胃腸が弱い人は、つねに虚証に寄った状態にあるといえるでしょう。

実証と虚証の体質的特徴

これを整えるには、陽の氣を加えて中間証に近づけること、つまり、胃腸や肝臓を適度に温めることが有効です。これを、東洋医学では「温補（おんぽ）」といいます。肝臓や胃腸を温補するには、さまざまな方法があります。たとえば、岩盤浴やホットストーンマッサージは、適温に温めた岩石を用いて外部から身体に熱を伝えます。よもぎ蒸しやハーブ蒸しは、薬用植物の有効成分を含んだ蒸気で、肛門や陰部から熱を送ります。自分でできるものとしては、ひまし油を含ませた布を腹部に乗せ、温熱パッドで温めるひまし油湿布という方法もあります。また、熱を物理的・直接的に伝えるものではありませんが、気功や太極拳、身体を温めるといわれる食材（植物）を使った食養生なども、陽の氣を体内に入れる良い方法です。
しかし、もっとも手軽で便利な温補法と言えば、やはり腹巻きの使用でしょう。腹巻きというと、ウールで分厚いものをイメージするかもしれません。もちろん、そういった昔ながらのタイプもありますが、最近は、さまざまなタイプのものが出回っています。薄手でフィット感のあるタイプや、竹炭やトルマリンなどの素材と組み合わせ、エネルギー効果を高めた高機能タイプなどは、日常的に腹部を保護し、温めるには絶好のグッズです。虚証に偏りがちな人は、ぜひ取り入れてみてください。

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