いいものSTORY
「水溶性低分子キトサン」STORY
心に働きかける「水溶性低分子キトサン」
エビやカニの殻に多く含まれるキトサンは、昔から、水の浄化などの工業分野で多く用いられてきました。
そのキトサンが、近年、健康分野で非常に注目を集めています。きっかけは、一人の精神科医師による学会発表でした。
ダイエットやメタボ対策でブームに
キトサンという天然成分をご存知ですか? ダイエットで悩んだことのある方は、聞いたことがあるかもしれません。キトサンは、エビやカニなどの甲殻類に多く含まれる動物性食物繊維。食事に含まれる脂肪や塩分を吸着して排出する働きがあることから、ダイエットやメタボリックシンドローム対策のひとつとして注目され、ブームになったこともあります。また、血中コレステロールを低下させる関与成分として、厚生労働省が定める「健康増進法に基づく特別用途食品」にも認定されています。このほか、免疫力を高めたり、体内の毒素を排出する働きもあると言われています。 2001年、「第15回キチン・キトサンシンポジウム」において、一人の精神科医師により、このキトサンの「心」への働きが発表されました。発表者は、ストレスケア日比谷クリニック院長の酒井和夫医学博士。酒井医師は、統合失調症や双極性障害、うつ病、パーソナリティ障害など12の精神疾患症例についてキトサンを使用し、すべての症例が副作用もなく著しく改善することを確認し、論文発表したのです。
特定のキトサンのみがもたらす「心の変化」
酒井医師がキトサンに注目したのは、17~18年前にさかのぼります。主に末期がんに効果があるということでキトサンの健康食品が大ブームになった際、懐疑的な気持ちと好奇心から、何十種類ものキトサンを自ら試してみたのです。すると、ある特定のキトサンを試したとき、大きな変化があったと言います。 「そのころの僕は長年不整脈に悩まされていて、ときどき薬も使っていました。ところが、ある特定のキトサンを摂っているときは不整脈が起きないのです。血圧も下がりました。それだけでなく、僕はあがり症でもあるのですが、これも改善されました。これらの症状は自律神経が関わっているので、このキトサンは自律神経を安定させるのではないかと推測しました」(酒井医師) そこで酒井医師は、クリニックに通院する患者さんにもモニターしてもらいました。するとやはり、多くの患者さんに良い変化が見られたそうです。この「特定のキトサン」こそが、水溶性低分子キトサンでした。
臨床で見えてきた驚くべき働き
やや専門的な話になりますが、キトサンは、グルコサミンという多糖類が多数つながって構成されています。つながり方はさまざまで、分子が並列につらなっているのもあれば、逆向きになっているものもあり、つながり方によって性質も異なってきますが、大きく「水溶性」と「脂溶性」に分けられます。基本的に、つながる分子量が少ないもの(低分子)が水溶性で、多いもの(高分子)が脂溶性です。 水溶性低分子キトサンの驚くべき効果に興味を抱いた酒井医師は、さまざまな種類の水溶性低分子キトサンを合成し、臨床を繰り返しました。そして、試行錯誤の末に最も効果の高い分子結合を見出したのです。一般的に、分子量が少ないほど体内への吸収は良くなりますが、ただ少なければ良いかといえば、そうではありません。最も顕著な働きが認められたのは、分子配列がしっかりしていて、秩序だった構造をしたキトサンでした。充填率が高いため、分子量の高い他のキトサンよりも同じ容積当たりの重量は重くなっています。 これを酒井医師がクリニックで臨床したところ、実に興味深い結果が表れました。まず、食欲のない方の100人中99人まで食欲が出ました。さらに、怒りっぽくキレやすい傾向のある方は、その傾向が和らぎました。長期間ひきこもりとなり、両親に暴力をふるっていた25歳の男性に、1日2,000mgを摂取してもらったところ、2ヶ月後には衝動的な症候が顕著に見られなくなった例もありました。 薬物治療で効果が見られなかった12の症例すべてに、早い例では1週間で、劇的な働きが見られたことから酒井医師はこれを学会で発表。大きな話題となりました。また、酒井医師と共同研究を行ったメーカーのキトサンサプリ「ヌーススピリッツ」は、その後、アメリカと日本で「メンタルヘルスをサポートする」という用途特許を取得しています。
薬ではできない絶妙な調整が可能
酒井医師の学会発表をきっかけに、水溶性低分子キトサンの心への働きが注目され、現在では、パニック障害やうつ病などのためのキトサンサプリが数多く出ています。しかし、いくら低分子といっても、それなりの大きさがあるキトサンが、血液の中に入ることは考えられません。まして、脳のBBB(Brain Blood Barrier:脳への異物侵入を阻止する血管バリア)を通り抜けることは不可能です。では、どのような仕組みで水溶性低分子キトサンは心(=脳)に働きかけるのでしょうか? これについて、酒井医師は、キトサン分子が肝臓に入って副交感神経節を特異的に刺激している可能性を指摘しています。自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経は心身を活発に活動させるよう働き、副交感神経は心身を落ち着かせるよう働きますから、副交感神経節が刺激されることで心身がリラックスし、精神的に良い働きが得られるというわけです。 もちろん、薬物治療でも、交感神経を遮断したり副交感神経を刺激することは可能です。しかし、水溶性低分子キトサンは、人の自然治癒力に働きかけて、薬ではできない交感神経と副交感神経のバランスを絶妙に整えることができるのではないかと、酒井医師はみています。 「いずれにしても、水溶性低分子キトサンが心に働きかけること、そして、身体への親和性や安全性が極めて高いことは証明されています。私にとっては、詳しいメカニズムよりも、機能性の高い構造のキトサンを見つけられたことのほうが大事。それが多くの患者さんを救っていることに意義を感じています」(酒井医師)
【酒井和夫氏プロフィール】
1951年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業、筑波大学医学研究科博士課程修了。医学博士、精神科医。ストレスケア日比谷クリニック院長。雑誌、新聞などに記事を連載しているほか、「精神科ってどんなとこ?」「分析・多重人格のすべて」など著書多数。
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